本の表紙ができるまで

本の表紙ができるまで


Twitterでもお知らせしましたが、カドカワ読書タイムより書籍『5分で読書・ゼッタイに振り返ってはいけない』が先日発売されまして、その表紙絵(カバーイラスト)を僕のほうで描かせて頂きました。

本の企画自体はかれこれ5ヶ月近く前、KADOKAWAの編集の方から「描いてみませんか?」というお誘いを頂いたのがきっかけ。面白そうな内容でしたし、担当頂いた編集の方もとても丁寧に対応してくださる方で、すぐに引き受けました。
内容はオムニバス形式のホラー短編ということだったのですが、あくまで児童文学のジャンルなので、装画から露骨な恐怖を彷彿させる描写はNGということ。色々と編集者の方から御助言を頂きながら、内容自体が、学校の登下校時の恐怖体験がメインとのことで、日暮れ前の独り下校というテーマに絞って、いくつかラフを描いてみることにしました。なお工程は全部デジタル。
cover-rough
気をつけた点としては、

  • 「物語が始まりそう」という期待感の一方で、「先に進むのがちょっと怖い」という恐怖心も彷彿させるような一枚にする
  • 日暮れ時に少し恐さを連想させるような場面を選定。トンネル・高架下・狭い路地とか
  • 女の子は、振り返る、という動作に限定

という具合で、3枚ほどラフ画を提出し見てもらいました。どれも好感を持ててくれて、とても嬉しかったのですが、最終的に③が採用されました。採用の理由については、特に教えてもらえなかったものの、俯瞰で見下ろされてる構図は、人物が受け身姿勢になり恐怖感が出るのと、階段を配置したことで奥行きが出て、より周囲の無機物と人物の対照が不安感を誘えたのが、決め手になったのかな、と思いました(あくまで仮説ですw)。
WIP
さて、描くものが決まったとなれば、あとは普段絵を描いている要領でゴリゴリと進めます。明暗や色調を意識しながら、パースやディテールの描き込みなど行いつつ、一方で最初のラフ画の雰囲気と離反しないよう気をつけながら仕上げていきます。毎回順調に行くかといえば全然そんなことはなく、今回は女の子の表情が自然な感じになるまで苦労し、全体は出来上がっても最後の最後まで表情のところは何回も描き直しました。甲斐あって、出来上がった清書はなんとか一発でOKをもらえることに。一気に緊張が解けた瞬間ーー。

しばらくしてから、装丁デザインを担当なさっているムシカゴグラフィックスさんの、とても格好良いロゴとタイポグラフィが入った初稿が届きます。
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溜息ものーー。個人的に女の子の振り返り動作と「振り返って…」の文字を掛け合わているところがなんとも粋です。僕自身これで全然問題なしと思いましたが、念のため、明暗と色調部分だけ気になったので、そこだけお伝えして最終稿へと向かいます。

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最終稿は、実物の書籍とほぼ同等のもののようです。僕は見本誌という形で、発売日のおよそ1週間前に、実物を頂きました。本当に自分の思い描いた理想系が形になっていて、素晴らしいのひと言でした。肝心の中身の方も早速読みました。あまりホラー小説を読んだことがない自分の感想ではあるものの、児童書向けでこんなに攻めるのか……。と、固唾を飲んで読めるような怖い話が詰まっており、非常に面白かったです。是非とも書店で見かけたら手に取ってみてください。

面白い話を書いてくださった作家の皆様、素晴らしい装丁デザインを施してくださったムシカゴグラフィックスさん、お声をかけてくれたKADOKAWA編集者様もありがとうございました!とても貴重な体験をすることができました。
装画、また描きたいです。


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